ウェストコースト・ロック特集:第1部

70年代ロックを彩った西海岸サウンド

ウェストコースト・ロックとは?

カリフォルニアから生まれた陽光と郷愁のサウンド

ウェストコースト・ロックとは1960年代後半から70年代にかけてアメリカ西海岸、特にロサンゼルス周辺で発展した、フォークやカントリー、ポップスを融合させたメロディアスでハーモニーを重視したロックです。明るい陽光が照らし出すカリフォルニアの光景と郷愁を誘う美しいサウンドは対照的で、数々の名曲は多くの人の心に残りました。第1部ではウェストコースト・ロックの主要アーティストをご紹介します。

また、この特集で紹介する曲やアルバムは Amazon Music Unlimited の無料体験で試聴できます。収録アルバムへのリンクも貼っていますので、興味のある方はご覧ください。

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夢のカリフォルニア

ザ・ママス&ザ・パパス『夢のカリフォルニア
男女二人ずつの編成でコーラスが美しいグループでした。65年にヒットした「マンデー・マンデー」と永遠の名曲「夢のカリフォルニア(California Dreamin’)」収録。ジャケット写真は爽やかさとは程遠いものの、”反体制的で自由なカウンターカルチャーを表現しようとした”のだそうです。

サーフ・ミュージックからウェストコースト・ロックへ

60年代前半の西海岸を代表するバンドといえばザ・ビーチ・ボーイズで、彼らの音楽は明るく開放的な、いわゆるサーフ・ミュージックでした。60年代中頃に入るとボブ・ディランがアコギをエレキに持ち替えてフォークロックが流行るようになり、西海岸ではカウンターカルチャーやヒッピー文化が生まれます。無邪気な青春を歌うサーフ・ミュージックは、内面を描くシンガーソング・ライターの歌やウェストコースト・ロックへと置き換えられていったのです。

ザ・ビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ
ブライアン・ウィルソンが全精力を注いだ66年の作品。ザ・ビーチ・ボーイズもサーフ・ミュージックから大人の音楽へと転換を図ります。ビートルズの『ラバーソウル』とこのアルバム、そして『サージャント・ペッパーズ』はお互いに影響を与えて傑作が傑作を生むという最高の流れが出来上がりました。

ウェストコースト・ロックの主要アーティスト10選

ロサンゼルスを中心に、アメリカ西海岸で活躍したウェストコースト・ロックの主なミュージシャンたちをアルバムと共に紹介します。ロサンゼルスにはアサイラム・レコードやワーナー・ブラザース・レコードなど大手レコード会社の拠点があり、住みやすい温暖な気候と共に新しい音楽が生まれる条件が揃っていたということですね。


01. イーグルス / Eagles
ウェストコースト・ロックで最大の成功を収めたバンド。リンダ・ロンシュタットのバックバンドからスタートして、カントリーロックのファースト・アルバムから最後の『ロング・ラン』まで多くのアルバムをヒットさせ、70年代のアメリカを代表するロックバンドとなりました。ジョー・ウォルシュ加入後に発表した『ホテル・カリフォルニア』は、ウェストコーストの夢の終焉を描いた歴史的名盤です。

主なアルバム
・1972年 イーグルス・ファースト / Eagles
・1973年 ならず者 / Desperado
・1974年 オン・ザ・ボーダー / On the Border
・1975年 呪われた夜 / One of These Night
・1976年 ホテル・カリフォルニア / Hotel California
・1979年 ロング・ラン / The Long Run

ならず者 / Desperado
切ない「ドゥーリン・ダルトン」やアコースティックギターが心地良い「テキーラ・サンライズ」など収録の名盤。タイトル曲はリンダ・ロンシュタットもカバーしました。ジャケット写真には初期メンバーのバーニー・リードン、裏ジャケットにはイーグルスの盟友J.D.サウザーやジャクソン・ブラウンも写っています。


02. ザ・ドゥービー・ブラザーズ / The Doobie Brothers
「チャイナ・グローブ」や「ロング・トレイン・ランニン」などトム・ジョンストンの野性味のあるボーカルが気持ちの良い前期と、グラミー賞最優秀レコード賞を受賞したアルバム『ミニット・バイ・ミニット』などマイケル・マクドナルドのソフトなボーカルで都会的なサウンドになった後期とでガラリと雰囲気が変わります。イーグルスとほぼ同時期にブレイクしたバンドで、共にウェストコースト・ロックを牽引しました。

主なアルバム
・1972年 トゥールーズ・ストリート / Toulouse Street
・1973年 キャプテン・アンド・ミー / The Captain and Me
・1974年 ドゥービー天国 / What Were Once Vices Are Now Habits
・1976年 ドゥービー・ストリート / Takin’ It to the Streets
・1978年 ミニット・バイ・ミニット / Minute by Minute

トゥールーズ・ストリート / Toulouse Street
イントロのギターがなんとも素敵な「リッスン・トゥ・ザ・ミュージック」や爽快な「ロッキン・ダウン・ザ・ハイウェイ」、オリジナリティ溢れる「ジーザス・イズ・ジャスト・オールライト」など収録のセカンド。このアルバムのヒットからドゥービーは快進撃を始めました。


03. リトル・フィート / Little Feat
スライド・ギターの名手、ローウェル・ジョージ率いるミュージシャンズ・ミュージシャン、玄人好みのバンド、リトル・フィート。イーグルスのような美しいメロディーとコーラスとは対照的なファンキーなロックで根強い人気がありました。拠点はロサンゼルスなのに南部のブルースやR&B、カントリーが混ざったようなサウンドは彼ら独特のものです。名盤『ディキシー・チキン』やライブの傑作『ウェイティング・フォー・コロンバス』などを残しますが、ローウェル・ジョージの急逝によりバンドは79年に黄金期を終えてしまいます。

主なアルバム
・1972年 セイリン・シューズ / Sailin’ Shoes
・1973年 ディキシー・チキン / Dixie Chicken
・1978年 ウェイティング・フォー・コロンバス / Waiting for Columbus

セイリン・シューズ / Sailin’ Shoes』          ネオン・パークが手掛けたなんとも言えないシュールなジャケットは、一筋縄ではいかない玄人好みの集団リトル・フィートの音楽と相性がいいんでしょうか。ローウェル・ジョージとは師弟のような関係だったリンダ・ロンシュタットがカバーした「ウィリン(Willin’)」のアコースティックギターのイントロと語りかけるような導入部、素晴らしいです。


04. クロスビー・スティルス&ナッシュ / Crosby,Stills&Nash
デヴィッド・クロスビーはザ・バーズ、スティーヴン・スティルスはバッファロー・スプリングフィールド、グラハム・ナッシュはザ・ホリーズのメンバーで、成功したバンド出身の3人がローレル・キャニオンで出会ったのがグループの始まりです。彼らの特徴はアコースティックギターに乗せた美しい3声ハーモニーで、デビューアルバムは大ヒットを記録します。結成から2回目のステージがあのウッドストック・フェスティバルだったそうで、緊張気味のスティーヴン・スティルスのステージでのセリフも映画に記録されていました。

主なアルバム
・1969年 クロスビー・スティルス&ナッシュ / Crosby,Stills&Nash

バンド名とメンバーの並びが一致しないジャケット写真(NSCになってます)。3人ともジーンズにブーツで如何にもアメリカというラフなスタイルがいいですね。ヒットした「組曲:青い眼のジュディ(Suite: Judy Blue Eyes)」は、気持ちの良いアコースティックギターの音色と彼らの美しいコーラスワークを堪能することができます。


05. クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング / Crosby,Stills,Nash&Young
CSNの美しいハーモニーをロック寄りのサウンドで補強したのがニール・ヤングで、ウッドストック・フェスティバルに出演するために急遽メンバーに加わったものの、カメラを拒否したので映画『ウッドストック』には彼の姿が写っていないのだそうです。音楽面では厚みが増したことで名盤『デジャ・ヴ』が生まれ、名実ともにスーパーグループの位置を確立するのですが、個性の強いメンバー同士の確執は避けられずニール・ヤングは1年ほどで脱退してしまいます。

主なアルバム
・1970年 デジャ・ヴ / Déjà Vu
・1971年 4ウェイ・ストリート / 4Way Street

デジャ・ヴ / Déjà Vu
才人スティーヴン・スティルスがほぼ全ての楽器を演奏して多重録音したアコースティック寄りの前作と比べると、「Almost Cut My Hair」や「Woodstock」などハードなギターが入ったロックな曲も出来上がりました。「Helpless」では美しいコーラスと共にニール・ヤングの繊細なボーカルも楽しめます。


06. ニール・ヤング / Neil Young
カナダ生まれの我が道を往くシンガー・ソングライター。スティーヴン・スティルスとはバッファロー・スプリングフィールド時代の同僚ですが、CSNに加入したものの結局バンドを抜けてしまいました。叙情的な曲からロックな曲まで幅広い音楽性を持っている人ですが、「Hey Hey, My My (Into the Black)」という曲で「It’s better to burn out than to fade away(色褪せていくよりも、今燃え尽きる方がいい)」と歌っているように頑固で信念を持ち、やりたいことを好きなようにやるのがニール・ヤングのスタイルです。

主なアルバム
・1970年 アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ / After the Gold Rush
・1972年 ハーヴェスト / Harvest
・1975年 今宵その夜 / Tonight’s the Night
・1979年 ラスト・ネヴァー・スリープス / Rust Never Sleeps
・1979年 ライヴ・ラスト / Live Rust

ハーヴェスト / Harvest
ギターのストロークとハーモニカ、そしてあの独特なボーカルが心を震わせる「ハート・オブ・ゴールド」、アメリカ南部の人種差別を辛辣に批判した「アラバマ」などの名曲を収録。CSN&Yや前作、そして本作で成功を収めたものの、ニール・ヤングは”メインストリートは退屈だ”と言ったそうです。


07. ジャクソン・ブラウン / Jackson Brouwne
見るからに繊細で誠実そうなジャクソン・ブラウンが紡ぎ出す音楽は、詩人が曲を書いて歌っているような感じですね。ロックンロールな曲も書きますがヒット曲を出してスターになりたかった訳ではなさそうで、グレン・フライやJ.D.サウザーなど周囲の人々から信頼される存在でした。イーグルスの「テイク・イット・イージー」は元々彼が書いていたもので、グレン・フライとの共作で完成した曲だそうです。そんな関係もあって『デスペラード』の裏ジャケットにも参加していたのかと納得しました。歳を重ねた現在の姿も穏やかな雰囲気でいいなと思います。

主なアルバム
・1973年 フォー・エヴリマン / For Everyman
・1974年 レイト・フォー・ザ・スカイ / Late For The Sky
・1976年 プリテンダー / The Pretender
・1977年 孤独なランナー / Running On Empty

レイト・フォー・ザ・スカイ / Late For The Sky
ポツンと光る街灯と54年製のシボレーが印象的な、胸がキュンとなる美しいジャケット。青空と夜の光景が同居する現実ではあり得ない構図は、ジャクソン・ブラウンの心象風景か。終わってしまった関係を歌ったタイトル曲を始め、聴けば聴くほど胸に沁みるアルバムです。


08. リンダ・ロンシュタット / Linda Ronstadt
キュートなルックスと素晴らしい声。後にオペラにも挑戦した圧倒的な歌唱力はリンダ・ロンシュタットの最大の武器でした。彼女はウェストコースト・ロックの女神的な立場にいた人で、バックバンドにいたドン・ヘンリーとグレン・フライはイーグルスを結成、元カレのJ.D.サウザーはソングライターとしてイーグルスをサポート、79年には「ユア・オンリー・ロンリー」を大ヒットさせます。売れてからも周囲の人に対する態度が変わることはなかったそうで、そういうところも彼女の魅力ですね。

主なアルバム
・1974年 悪いあなた / Heart Like a Wheel
・1975年 哀しみのプリズナー / Prisner in Disguise
・1976年 風にさらわれた恋 / Hasten Down The Wind
・1977年 夢はひとつだけ / Simple Dreams

夢はひとつだけ / Simple Dream
1曲目の「イッツ・ソー・イージー」が爽快です。ワディ・ワクテルの印象的なイントロのギター、アンドリュー・ゴールドとケニー・エドワーズのはっきりくっきりしたコーラス。西海岸の歌姫リンダ・ロンシュタットの溌剌としたボーカルを引き立てるバックのメンバーが充実してます。


09. ジョニ・ミッチェル / Joni Mitchell
彼女の音楽はロックではないのかもしれませんが、ウェストコースト・ロックを語る上では欠かせない存在です。カナダ生まれのジョニ・ミッチェルはデヴィッド・クロスビーに見出されてLAに移住後、ローレル・キャニオンに家を購入。ここを舞台にできたアルバムが『レディズ・オブ・ザ・キャニオン』で、彼女の家は当時のフォークロック・コミュニティの中心地だったそうです。日本では漫画のトキワ荘が有名ですが、若きミュージシャンたちが集う場所があったのは彼らにとって幸運だったと思います。

主なアルバム
・1969年 青春の光と影 / Clouds
・1970年 レディズ・オブ・ザ・キャニオン / Ladies of the Canyon
・1971年 ブルー / Blue
・1976年 逃避行 / Hejira

青春の光と影 / Clouds
「青春の光と影(Both Sides, Now)」収録の名盤。ジュディ・コリンズが67年に歌ってヒットさせましたが、本人が歌うとアコースティックギターのストロークと共に染み込んでくるような感覚になりますね。素敵な邦題は日本で長く愛されるひとつの要因になったと思います。ジャケットのイラストはジョニ・ミッチェルが描いた自画像です。


10. キャロル・キング / Carole King
キャロル・キングはニューヨークで作曲家として夫のジェリー・ゴフィンと共に「ロコモーション」などのヒット曲を量産していましたが、離婚後に移り住んだのがロサンゼルスのハリウッドヒルズで、ここからシンガー・ソングライターとしてのキャリアが始まります。名盤『つづれおり』のジャケット写真はローレル・キャニオンの自宅で撮影されたもので、交友の深いジェームス・テイラーやジョニ・ミッチェル、プロデューサーのルー・アドラーも近くに住んでいて曲作りの環境としては彼女にとって良かったのでしょうね。

主なアルバム
・1970年 ライター / Writer
・1971年 つづれおり / Tapestry
・1971年 ミュージック / Music

つづれおり / Tapestry
キャロル・キング最大のヒット作。「君の友だち(You’ve Got a Friend)」は、久しぶりに聴くたびに良い曲だなと思います。他にも「ソー・ファー・アウェイ」や「ナチュラル・ウーマン」など名曲満載の名盤。グラミー賞のアルバム・オブ・ザ・イヤーなど主要3部門を受賞したシンガー・ソングライターの金字塔的作品です。

ミュージシャンの楽園、ウェストコースト

温暖な気候のカリフォルニアは住みやすい場所で、ロサンゼルスには大手レコード会社のスタジオや当時若手の登竜門でもあったライブハウス「トルバドール」がありました。近くに仲間がいることで曲作りも捗り、ウェストコーストはまさにミュージシャンにとっての楽園だったのではないでしょうか。アルバムを作るためにはレコード会社や有能なマネージャーの力も必要だったでしょう。良い環境があったから良い音楽が生まれたのですが、LAには奇跡的に才能ある人たちが集まった場所がありました。第2部は『ウェストコースト・ロックの聖地 ローレル・キャニオン』です。

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